多様性を力に変える!チームを「自走」させる7つのステップ ~ その2 透明性と⼼理的安全性の確保 ~

目次

この記事について

これはチームや組織が最高のパフォーマンスを発揮するために欠かすことができない7つのステップのうちの二つ目「透明性と⼼理的安全性の確保」です。

  1. ⾃⾝のマインドセットの変⾰
    • プレーヤー気質からの脱却と、コーチングマインドの確⽴
  2. 透明性と⼼理的安全性の確保 今回のテーマ
    • オープンなコミュニケーションと失敗を恐れない環境づくり
  3. ミッション・ビジョン・バリューの共有
    • 組織の⽬的と価値観を全員で作り上げる
  4. ⽬標の連携
    • 組織の⽬標と個⼈の⽬標を結びつける
  5. 失敗の奨励
    • チャレンジを促し、失敗から学ぶ⽂化の醸成
  6. 適切な権限委譲と尊重
    • 次世代リーダーの育成と意思決定の尊重
  7. テクノロジーの積極活⽤とコラボレーションの促進
    • 最新技術と部⾨横断の協⼒で効率と創造性を⾼める

チームがチームとして機能するために

透明性とは、意思決定プロセスや目標に対する現在の状況など、組織に関する情報が誰にでも分かりやすく正確に理解できることです。

心理的安全性は、「心理的に安心で快適な状態」と誤解されがちですが、そうではありません。「相手に感じ良く振る舞うために」「相手の意見に何でも賛成する」ことではなく、むしろ「相手を尊重し、建設的に反対意見を言い合える関係性」を指します。

チームがチームとして機能するためには、透明性と心理的安全性が確保されていることが前提となります。つまり、このステップは以降のすべてのステップの基礎となるため、とても重要です。

透明性とチームの自律性との関係性

普段たくさんの業務を抱えて忙しいリーダー、マネージャーは出来る限り効率的にチームを運営したい。だからいちいち情報を共有することが面倒だったり、情報を開示することでメンバーのコントロールがしづらくなる。そう思うのも無理はないと思います。

ただ、チームを「自走」させる上で、透明性は不可欠です。なぜなら、「情報がなければ、現場で正しい自己決定ができないから」です。

透明性と自律性は、車の両輪のような関係にあります。透明性が欠如した状態での自律は、メンバーが同じ方向を向けず、単なる「放置」や「カオス」に陥る危険性を持っています。具体的な理由は、大きく以下の4点に集約されます。

  1. 意思決定の質とスピードの向上
    • 自律的なチームでは、リーダーの指示を待つのではなく、メンバー自身が現場で迅速に判断を下す必要があります。しかし、経営の方向性、プロジェクトの背景、他チームの動き、予算などの「コンテキスト(背景情報)」が透明化されていないと、全体最適ではなく部分最適の、あるいは見当違いな意思決定をしてしまいます。必要な情報に制限なくアクセスできる状態があって初めて、リーダーと同じ目線で質の高い決断が可能になります。
  2. アラインメント(方向性の統一)の確保
    • 自律的なチームでは、リーダーの指示を待つのではなく、メンバー自身が現場で迅速に判断を下す必要があります。しかし、経営の方向性、プロジェクトの背景、他チームの動き、予算などの「コンテキスト(背景情報)」が透明化されていないと、全体最適ではなく部分最適の、あるいは見当違いな意思決定をしてしまいます。必要な情報に制限なくアクセスできる状態があって初めて、リーダーと同じ目線で質の高い決断が可能になります。
  3. 心理的安全性と信頼関係の構築
    • 情報が一部の階層やメンバーに偏っている(情報の非対称性がある)状態は、「自分たちは信頼されていない」「何か隠されている」という不信感を生みます。意思決定のプロセスや、時には失敗・リスクなどのネガティブな情報も含めてオープンに共有される環境は、チーム内の心理的安全性を高めます。これにより、メンバーは失敗を恐れずに挑戦し、問題が起きても隠さずにすぐ共有できる自律的な行動をとれるようになります。
  4. フィードバックループによる継続的な改善
    • 自律的なチームは、外部からのマイクロマネジメントではなく、自らのプロセスを振り返り改善していく力が必要です。誰が何をしていて、どんな課題を抱えており、どこにボトルネックがあるのかが可視化(透明化)されていなければ、正しいフィードバックループを回すことができません。透明性があるからこそ、チーム内で建設的な意見交換が生まれ、自浄作用が働きます。

透明性を担保することは、メンバーが暗闇を手探りで歩くのではなく、自律的に動くための「地図とコンパス」を渡す行為だと言えます。

心理的安全性を構成する4つの因子

「透明性」が自律的なチームの「地図とコンパス(判断材料)」であるとするならば、「心理的安全性」はメンバーが一歩を踏み出すための「エンジン(行動の原動力)」と表現することができます。

日本の組織において心理的安全性を計測・構築する際、石井遼介氏が提唱した「4つの因子」が非常にわかりやすく、実践的です。ここでは概要のみをご紹介しますが、詳しく知りたい方は氏の著書「心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える」をご覧になってください。

  1. 話しやすさ(Speak up)
    • 「これってどういう意味ですか?」「わかりません」といった初歩的な質問や、ちょっとした意見、ネガティブな報告を、誰に対しても気兼ねなく言える状態です。
  2. 助け合い(Help each other)
    • トラブル発生時や業務が逼迫している時に、「助けてほしい」「手伝ってほしい」と素直にSOSを出せる、そしてそれに対してチームが協力的に動く状態です。
  3. 挑戦(Challenge)
    • 失敗を過度に恐れず、新しいやり方や困難な課題にトライできる状態です。「とりあえずやってみよう」が歓迎される空気感とも言えます。
  4. 新奇歓迎(Novelty/Diversity)
    • チームの常識やこれまでの慣習にとらわれない、個人の持ち味や異なる視点、突飛なアイデアを「それも面白いね」と受け入れる状態です。

なぜ心理的安全性がチームの「自立自走」に不可欠なのか?

チームがリーダーの指示を待たず、自律的に考え行動(自立自走)するためには、以下の理由から心理的安全性が絶対的な土台となります。

  1. 「指示待ち」から「自己決定」への移行
    • 心理的安全性が低い(失敗すると怒られる、無知を笑われる)環境では、人は自己防衛のために「言われたことだけをやる」「確実な指示を待つ」という行動をとります。自立自走の第一歩は「自ら決断して動く」ことですが、心理的安全性というセーフティネットがなければ、誰もそのリスクを取りません。
  2. バッドニュースの高速化と自律的な軌道修正
    • 自立自走するチームは、完璧に計画を実行するチームではなく、走りながら壁にぶつかり、自分たちで問題を解決できるチームです。「話しやすさ」と「助け合い」の因子がないと、ミスやトラブルが隠蔽され、リーダーが気づいた時には手遅れになります。安全な環境ではバッドニュースが即座に共有され、チーム全体で自律的に軌道修正を図ることができます。
  3. 妥協ではない「健全なコンフリクト(対立)」の創出
    • 自律的なチーム運営では、メンバー同士で意見をぶつけ合い、より良い最適解を見つけるプロセスが必要です。心理的安全性は「馴れ合い」ではなく、「意見を否定されても、自分自身が否定されたわけではない」と信じられる状態を指します。これにより、波風を立てることを恐れずに、建設的な議論(ヘルシー・コンフリクト)を自発的に行えるようになります。
  4. 継続的な学習と改善(学習する組織)
    • 自立自走を続けるには、チーム自身が常に学び、プロセスをアップデートしていく必要があります。「挑戦」し、その結果(成功も失敗も)から学び、「新奇歓迎」の精神で新しい手法を取り入れる。このサイクルを回すための前提条件が心理的安全性です。

透明性と心理的安全性を実際にどう確保するか?

透明性によって「正しい情報」を得て、心理的安全性によって「行動する勇気と発言権」を得ることで、チームは初めて真の意味で自立自走を始めます。

では、どうやってチームに透明性と心理的安全性をもたらすか。ここでは、私が実際にやってきたことを一例として紹介します。

チームビルディング

心理的安全性を確保する具体的な取り組みとしては、まず、1on1やワークショップ、非公式コミュニケーションの活用等が挙げられます。
チームの立ち上がりにまずやったことは、「自己開示」と「相互理解」の機会をつくることでした。アジャイル界隈ではお馴染みの「ドラッカー風エクササイズ」でみんなが普段やっていることや得意なことだけでなく、大切にしている価値観や苦手だけど克服したいことなど少し共有しづらいことも自己開示することで、急速に相互理解をすることができました。(「ドラッカー風エクササイズ」は「アジャイルサムライ」の著者 Jonathan Rasmusson が提唱したチームビルディングのための手法です)

「ドラッカー風エクササイズでの自己紹介と自己開示。オンラインホワイトボードツールMiroを使いました。


また、定期的な1on1を通じて雑談も交えながらお互いの理解を深めるようにしました。普段の業務における課題や目標に対する現在の状況なども一緒に点検していきました。ランチや業後飲み会といった非公式なコミュニケーションも積極的に活用するようにしました。


正直に言うと、私はこれまで、1on1もチームビルディングのワークショップも積極的に活用してきませんでした。どちらかというと、1on1は業務連絡や情報収集がメインで、何か他に優先すべきタスクがあると、スキップすることも多かったように思います。チームビルディングのワークショップも本当に効果があるのか懐疑的でした。

ただ、コーチングを学んでいく中で、人は話すだけでも思考が整理されてやるべきことに自分で勝手に気付いたりして、意外とスッキリするということがわかりました。
また、自分のことを知ってもらえたり、相手のことが理解できるとやっぱり嬉しいと言うこともわかりました。

今では1on1もチームビルディングも、リーダーにとって最も大事な仕事の一つだと考えています。

また、透明性を確保するために、オープンなコミュニケーションも推進していきました。
チャットツールのSlackのチャネルを整理し、不要なチャネルを削除して分散されがちな情報をまとめたりしていきました。グローバルチームとしてベトナムメンバーへの情報格差を無くしていくため、基本的なコミュニケーションを全て英語で行うようにチームに働きかけました。

常に謙虚な姿勢で知ったかぶりをせず、わからないことは教えてもらい、失敗も進んで共有するようにしていきました。こうすることで、わからないことは聞いてもいいんだ、失敗することは怖くないんだということを少しずつわかってもらうようにしました。

経験が少ないメンバーに任せる際には、謙虚な姿勢と献身的なサポートを心がけました。
あまり出しゃばらず、メンバーの意思や行動を尊重し、必要に応じてお手本となるものを共有したり、得意な人をサポートにつけるようにしました。慣れるまで、毎日15分程度でも良いので質問に答えたり壁打ちの相手になる時間を設けるのも効果的でした。

また、賞賛と感謝の文化を育んでいきました。
自分の想定外の提案やアイデアがメンバーから出た場合も、まずは受け入れる姿勢を徹底しました。誰でも、自分の提案やアイディアが受け入れられると、自分自身が受け入れられているように思い、嬉しくなるものです。
まずは「いいね」して受け入れて、わからないことや不安に思っていることはその後質問するようにしていきました。優れたアイディアはその中から生まれることも多かったように思います。

開発プロセス

開発プロセスとしては、変化に迅速に対応するため、アジャイルプロセス、特にスクラムへ適応していきました。

  • 私たちは2週間を1区切り(スプリント)として、開発を進めていました。
  • スプリントプランニングという計画のイベントでは、メンバーの休暇予定やスケジュールの見通し、リスク等を設定していきながら、スプリントのゴールを設定しました。
  • デイリースクラムという日々のスタンドアップミーティングでは、スケジュールに対する進行状況や課題の状況等を点検していきました。
  • スプリントレビューという総括のイベントでは、出来上がった機能をステークホルダーへ共有することで、認識のズレがないか、期待通りのものが開発されているかを点検しました。
  • スプリントレトロスペクティブで定期的な振り返りを実施し、日頃の感謝を伝え合い、うまくいったこと、いかなかったこと、次の改善アクションを積極的に共有し合うようにしました。

私は認定スクラムマスターの資格は保有していますが、これまではアジャイルについても割と半信半疑なところがあって、馬なりで走って、計画通りに進まなくてもしょうがない、だからいつ完了するのかの見通しが立たない、みたいな感じで思っていました。
ただ、アジャイルだって計画は重要だし、各イベントのタイムボックスは絶対に守ってダラダラしないし、必要なドキュメントはちゃんと作成します。
自立した人たちが自律的に高い目標を立てて運営していくより難易度の高いプロセスなのだと自覚してから自身がアジャイルになれたと思っています。
「アジャイル宣言の背後にある原則」にも明記されているように、このように、アジャイルプロセスには、お互いを信頼し、定期的な振り返りと継続的な改善を促し、チームを「自走」させる仕組みが組み込まれています。

意欲に満ちた人々を集めてプロジェクトを構成します。
環境と支援を与え仕事が無事終わるまで彼らを信頼します。
最良のアーキテクチャ・要求・設計は、自己組織的なチームから生み出されます。チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

アジャイル宣言の背後にある原則」 より抜粋

プレーヤー気質からの脱却の途上で、段々と自分に対する感謝の声が少なくなっていくことに少し寂しい気持ちになるかもしれません。ただこれは、自分が正しい方向に進んでいる証拠なのです。代わりにメンバーに対する感謝の声が増えてきているのがわかるはずです。

なので、寂しい気持ちはグッと飲み込んで、精一杯メンバーを祝福してあげてください。それが段々とメンバーの自信に変わっていきます。

チームが伸び伸びと議論しながら開発を進めています

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