この記事について
これはチームや組織が最高のパフォーマンスを発揮するために欠かすことができないことを7つのステップとしてまとめたものです。
ここに書かれているそれぞれのステップ自体は特に目新しいこともなく、むしろ当たり前では?と思う方も多いかもしれません。
大事なことは「物事には段階(ステップ)がある」ということです。いかにリーダーが優れた知識やスキルを持っており、自身のベストプラクティスをチームに当てはめようとしても、チームメンバーにそれを受け入れるための信頼関係や明確な動機付けがなければリーダーの思惑通りに改善するどころか、チーム内にコンフリクトが発生し状態は逆に悪くなります。
これは現役のエンジニアリングマネージャーである筆者が、自らのしくじりとそこからのリカバリーをもとにまとめた私のレジリエンスの記録です。
この記録があなたのチームや組織を「自走」させるきっかけになることを願っています。
プロローグ(私のしくじりの共有)
ある日、リリースの失敗や不具合が続いていた部署の立て直しをしたいと私に声がかかりました。頼まれると悪い気がしない生来の性分(調子乗り)と、英語で海外のメンバーと仕事がしたいという自身の欲求が満たせるとの思いから二つ返事で了承しました。
「私が何とかしてやります」という気持ちで意気揚々とその部署に乗り込んで行ったのですが、それが私の人生の大きな転機になるとは当時は全く思っていませんでした。
その組織は以下の特性を持っていて、まさに私の望み通りのチーム構成だと楽観的に考えていました。
- 多拠点(東京、ホーチミンシティ、ハノイの3拠点)
- 多国籍(日本🇯🇵、ベトナム🇻🇳、インドネシア🇮🇩の3カ国)
- 公用語は英語🔤
しかし、現場の状況は想定以上にカオスでした。

毎晩のように鳴る障害通知の電話で眠れない日々が続きましたが、異動してきたばかりでドメイン知識も無い私は、何もできずにメンバーが対応しているのをただ眺めているだけでした。
また、当時は作業者としてのマインドセットであったため、インシデントコマンダーとしての責任を果たすよりも、自分自身で調査やリカバリーができないことに対して歯痒さを感じていました。
そして、リリース直後に不具合を検知し切り戻し(リバート)をすることもしばしばありました。リリースが失敗に終わると「またか…」という雰囲気になり、それが繰り返されることでリリースがすっかり憂鬱になっていました。
覚悟もなく意気揚々と乗り込んできたものの、連日のトラブルシューティングですっかり疲弊して、段々と気持ちが腐って視野が狭くなっていきました。
自分は頑張っている(つもり)なのに全然状況が良くならないのは既存のメンバーや開発プロセスに問題があるのではないかと決めつけ、チームメイトに対して敬意を払い彼らの意見を尊重することもせずに上から押し付けるようなコミュニケーションをするようになりました。
また、彼らが生産性や品質改善に向けたツールの導入やアークテクチャーの変更などの提案をしてきても「またどうせ失敗する」と取り合わないどころか、メンバーがやろうとすることに否定的な目線で細かくチェックし、揚げ足を取るようなフィードバック(マイクロマネジメント)をすることもありました。
そんなコミュニケーションの取り方ではお互いの信頼貯金は貯まらず、お互いのコンテキストも構築されない状態が続きました。
英語で海外のメンバーと仕事がしたいと息巻いていた割に実は当時本格的に英語で仕事をするのが初めてで、「月元が何を話しているのか良く分からない」と本人以外からの第三者から日本語でフィードバックを受けたこともあります。ショックを受けた私は、伝わらないコミュニケーションから逃げるように調査やデータパッチなどの現場作業にのめり込んでいきました。組織やメンバーの成長も考えない、メンバーとしての日々が続きました。といっても、技術的スキルはメンバーに劣るため自身が度々ボトルネックになって、助けになるどころか逆に足を引っ張っているような状況でした。
日本向けのプロダクトでPdM(プロダクトマネージャー)やUX/UIデザイナーなども日本人だったため、大事なコミュニケーションは日本側で閉じていました。本来ならワンチームとなり同じゴールを追い求めて行くべきところを、英語でのコミュニケーションがネックとなりチームの分断を招いていました。そのため、なぜこの対応をするのか、この対応をするとどうユーザーが嬉しいのかなどのバックグラウンドに対する情報がうまく伝わらず、アウトプットが想定と異なり手戻りになることも度々ありました。そんな時でもメンバーはスケジュールに間に合わせようと休⽇出勤なども辞さず頑張ってくれていました。
にもかかわらず、チームに参加して半年が過ぎても状況は改善せず、品質の安定性の低さは社内でも有名で、問題が起こると「またか。。」みたいな空気が流れ、社内で⾃⼰紹介した際に所属を明かすと、「⼤変ですね」と同情されることもありました。

メンバーは皆明るく前向きなので、チームの雰囲気は決して悪くありませんでした。ただ流⽯に疲れが⾒えたことと、状況が改善されていないこと、⾃分が役に⽴っていないどころか逆に⾜を引っ張っていると感じたことから、常に焦りを感じていました。そんな時でも早く⾃分の技術スキルを上げなきゃと⾃分の視点でしか考えられておらず、俯瞰的な視点で改善策を打ち出すことはしていませんでした。
転機。降給とネガティブフィードバック
長い間結果が出せない私に対して、上司から降給とネガティブフィードバックが伝えられました。その時の言葉がとても印象に残っています。
「これまで⼀緒にやってきてきみのいいところは知ってるつもりですが、いつまで⾃分の得意じゃないことで勝負するつもりですか?」
今思うと上司として精一杯の叱咤激励だったと思いますが、最初は降給のショックですんなり受け止めることはできませんでした。こうやって文章に書いてみると当たり前の結果なのですが、当時はそういったことも判断できないくらい視野が狭くなっていました。
ひとしきり落ち込んで落ち込んで、落ち込んだ後、フィードバックを受け入れて自分の中に落とし込んでいきました。その過程でいろいろなことに気がつきました。
- こんなカオスな状況にも関わらず、メンバーは何とかスケジュールや品質を確保しようと⼒を尽くしてくれていたこと。そんな頑張るメンバーを活躍させて結果を出すのがリーダーの役割であること
- メンバーたちは才能に溢れ、多くの可能性を秘めていること。そんなメンバーを信じて成⻑させることもリーダーの役割であること
- ⾃分のエゴや偏⾒がチームの成⻑とメンバーとの信頼関係構築を阻害すること
- ⼼理的安全性を確保することがチームの健康を保つことにつながること
- 閉じられたコミュニケーションで情報共有が不⼗分な状態だと、当事者意識の醸成ができなかったりアウトプットの品質が不⼗分だったりすること
- ⻑期的視点の⽋如がチームの停滞を招くこと
そしてその時、もう遅いかもしれないけど、自分にできることを一つずつやってチームに貢献しようと誓いました。

巻き返しへの決意。 ~ チームを「自走」させる7つのステップ ~
これからご紹介する「7つのステップ」は、最初からこれをやろうと決まっていたわけではなく、チームが良くなるために自分ができることは何か?と考えて一つずつ進めていった結果です。これらのアプローチは自身が関わる様々なチームに適用してみて、再現性があることを確信しています。以降の記事で一つずつご紹介していきます。
- ⾃⾝のマインドセットの変⾰
- プレーヤー気質からの脱却と、コーチングマインドの確⽴
- 透明性と⼼理的安全性の確保
- オープンなコミュニケーションと失敗を恐れない環境づくり
- ミッション・ビジョン・バリューの共有
- 組織の⽬的と価値観を全員で作り上げる
- ⽬標の連携
- 組織の⽬標と個⼈の⽬標を結びつける
- 失敗の奨励
- チャレンジを促し、失敗から学ぶ⽂化の醸成
- 適切な権限委譲と尊重
- 次世代リーダーの育成と意思決定の尊重
- テクノロジーの積極活⽤とコラボレーションの促進
- 最新技術と部⾨横断の協⼒で効率と創造性を⾼める
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