多様性を力に変える!チームを「自走」させる7つのステップ ~ その4 目標の連携 ~

目次

この記事について

これはチームや組織が最高のパフォーマンスを発揮するために欠かすことができない7つのステップのうちの四つ目「目標の連携」です。

  1. ⾃⾝のマインドセットの変⾰
    • プレーヤー気質からの脱却と、コーチングマインドの確⽴
  2. 透明性と⼼理的安全性の確保
    • オープンなコミュニケーションと失敗を恐れない環境づくり
  3. ミッション・ビジョン・バリューの共有
    • 組織の⽬的と価値観を全員で作り上げる
  4. ⽬標の連携 今回のテーマ
    • 組織の⽬標と個⼈の⽬標を結びつける
  5. 失敗の奨励
    • チャレンジを促し、失敗から学ぶ⽂化の醸成
  6. 適切な権限委譲と尊重
    • 次世代リーダーの育成と意思決定の尊重
  7. テクノロジーの積極活⽤とコラボレーションの促進
    • 最新技術と部⾨横断の協⼒で効率と創造性を⾼める

目標」が他人ごとになっていませんか?

前回のステップで、組織の存在意義や目指す姿、大切にしたい価値観を言葉にしました。ただ、MVVはそのままでは日々の仕事とつながりません。今日の自分のタスクが、あの立派な言葉のどこにつながっているのかが見えない。だからいつの間にか、MVVは「壁に貼ってあるいい話」になってしまいます。

その間を埋めるのが、このステップの「目標の連携」です。

期初に目標を立てて、期末に評価のために引っ張り出す。その間の半年間、誰も目標の話をしない。もしそんな運用になっているとしたら、その目標はメンバーにとって「自分の目標」ではなく「提出物」になっています。提出物のために人は自走しません。

私自身、1on1を業務連絡や情報収集の場として使っていた時期が長くありました。他に優先すべきタスクがあるとスキップすることも多かったです。当時は、目標について対話することが自分の仕事だとすら思っていませんでした。今振り返ると、メンバーが指示待ちに見えていたのは、彼らの姿勢の問題ではなく、目標が「自分ごと」になる場を私が用意していなかったからだと思います。

目標の連携とは、「意味の連鎖」をつくること

目標の連携とは、組織の目標を分解してメンバーに割り当てることではありません。割り当てはノルマの配布であって、連携ではありません。

連携とは、次の3つが一本の線でつながっている状態を指します。

  • 組織はどこへ向かうのか(ミッション・ビジョン)
  • そのためにチームは今期、何を実現するのか(チームの目標)
  • その中で、私は何を担い、それが自分の成長のどこにつながるのか(個人の目標)

大事なのは、この線が「上から下へ」だけでなく「下から上へ」もつながっていることです。組織の目標に個人を合わせるだけだと、メンバーは自分の意思を持ち込めません。個人がやりたいこと・伸ばしたいことが、組織の目標のどこかに置き場所を持っていて初めて、目標は「やらされるもの」から「自分が取りに行くもの」に変わります。

チームを「自走」させたいなら、この向きは決定的に重要です。自走とは、指示がない場面で自分で判断して動くことです。人は、自分にとって意味のあるものにしか、自分の判断を使ってくれません。

どうやって連携させるか

ここでは、私が実際にやってきたことを一例として紹介します。

まず「なぜ」から話す

目標を伝えるとき、「何を」「いつまでに」だけを共有していないでしょうか。その2でお話しした透明性の話とつながりますが、背景(コンテキスト)が共有されていない目標は、現場で正しい自己決定を生みません。

なぜこの目標なのか、これを達成すると誰がどう嬉しいのか、逆にやらなかったら何が起きるのか。ここまで話して初めて、メンバーは目標の意図を汲んだ判断ができるようになります。目標そのものよりも、目標の「なぜ」を丁寧に共有してください。手戻りが減ります。

個人の志向を先に知る

組織の目標と個人の目標を結びつけるには、そもそも個人の目標を知らないと始まりません。

その1でご紹介したドラッカー風エクササイズは、ここでも効きます。得意なこと、大切にしている価値観、苦手だけど克服したいこと、これからチャレンジしたいこと。こうしたことが共有されていると、目標設定の面談は「あなたの目標は何ですか?」といういきなりの質問から始まらずに済みます。

「前に『設計をやってみたい』と言っていましたよね。今期のこのテーマ、担当してみませんか」と言えるかどうか。この一言が出てくるかどうかで、目標は自分ごとになったり、ならなかったりします。

1on1を「目標の点検の場」にする

私は定期的な1on1の中で、雑談も交えながら、普段の業務における課題や目標に対する現在の状況を一緒に点検するようにしていました。

ここでのポイントは、進捗の確認ではなく、点検だということです。進捗の確認は数字の報告で終わりますが、点検は「うまくいっていないとしたら、何が邪魔をしているか」まで一緒に見ます。そして、邪魔になっているものがリーダーにしか取り除けないものであれば、それを取り除くのがリーダーの仕事です。

コーチングを学ぶ中で気づいたのは、人は話すだけでも思考が整理されて、やるべきことに自分で勝手に気付いたりするということでした。目標についても同じです。リーダーが答えを渡すより、問いを渡したほうが、その目標は本人のものになります。

スプリントゴールという最小単位の連携

私たちは2週間を1区切り(スプリント)として開発を進めていました。スプリントプランニングでは、メンバーの休暇予定やスケジュールの見通し、リスクなどを踏まえながら、スプリントのゴールを設定します。

このスプリントゴールは、目標の連携の最小単位だと考えています。半年先の目標は遠すぎて日々の判断の基準になりませんが、2週間先のゴールなら、今日この実装をどこまでやるべきかの判断に直接使えます。

そして、スプリントレビューでステークホルダーに共有し、期待とのズレを点検する。長期の目標と日々の作業の間に、こうした短いサイクルの目標を挟むことで、線がつながったままになります。

目標は生き物として扱う

状況は変わります。前提が変わったのに目標だけが期初のまま残っていると、メンバーは「意味がないとわかっている目標」に向かって走ることになります。これは自走とは正反対の状態です。

前提が変わったら目標も見直す。見直したことと、その理由をチームに開示する。これができる組織は、目標を「更新できるもの」として扱えるので、変化に強くなります。

やりがちな失敗

自戒も込めて、目標の連携がうまくいかないときによく見られるパターンを挙げておきます。

  • 目標が多すぎる
    • 全部が大事だと、何も大事ではなくなります。チームが本気で取りに行く目標は、期を通じて数個で十分です。
  • 目標が「作業リスト」になっている
    • 「〇〇機能をリリースする」だけだと、なぜそれをやるのかが落ちます。「誰のどんな状態を実現するのか」まで書けているか確認してください。
  • 期初と期末にしか登場しない
    • 目標が日常の意思決定に使われていないなら、それは目標ではなく記録です。
  • 数字だけで測る
    • 測りやすいものだけを目標にすると、測りにくいけれど大事なこと(品質、育成、チームの健全性)が静かに後回しになります。その3でお伝えしたバリューの体現を評価に組み込む話は、ここと対になっています。

リーダーの仕事は、線を引き直し続けること

目標の連携は、一度きれいな図を描いて終わり、というものではありません。人は入れ替わり、事業の優先順位も変わります。だからリーダーは、組織の目標と個人の目標をつなぐ線を、何度でも引き直し続けることになります。

面倒に感じるかもしれません。ただ、この線がつながっているチームは、リーダーが細かく指示を出さなくても、迷ったときに自分たちで判断できるようになります。その1でお話ししたように、リーダーの役目はチームのパフォーマンスを最大化することです。線を引き直す時間は、指示を出し続ける時間より、はるかに安い投資だと思います。

次回は「失敗の奨励」についてお話しします。目標が自分ごとになったチームは、必ず、うまくいかないことにぶつかります。そのときにチームが縮こまるか、学びに変えられるかで、その後の伸び方が決まります。

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